散歩のついでに富士山に登った人はいない

 今日は授業で期末試験を返却しながら、散歩のついでに富士山に登った人はいない」というお話しをしました。この言葉は経営コンサルタントの小宮一慶(こみやかずよし)さんの本の中で読んだ言葉です(出典は不詳ですが)。まるでサンダル履きで富士山へ登ろうか、という態度の生徒が目立ったからです。ソフトバンク会長の孫 正義さんの「まず登る山を決めろ!」という言葉も紹介しました。まずは登るべき山を明確に決めて(目標)、入念な準備、装備を固めてから一歩一歩着実に山に上がっていくのです。

 目の前のことに必死で取り組むことは重要でしょう。しかし、もしかしたらそれは、必死で「散歩」をしているだけかもしれません。富士山に登ろうとしている人も歩いています。散歩をしている人も歩いています。でもその差は歴然としています。○○大学を明確に心に抱きながら、毎日精一杯勉強をしている生徒がいます。ただ言われたままに勉強している人もたくさんいます。その違いは、富士山に登ろうとして、それに向かって歩いているのか、それとも、何の「目標」もなしに歩いているかの差です。目標を持って勉強する人と、そうでない人とでは、同じように頑張ってみても大きな差がつくのです。

 高い目標を掲げた場合には、行動を起こす前に色々と考え、準備をするのです。「登ろうとする人と、登ろうとしない人の心持ちと姿勢・態度には、ずいぶんの違いが出来ている」のです。「散歩のついでに富士山に登った」という人が現れました。といっても、頂上までたどりつくことができずに、途中で救助されたとのことですが…。夜、富士山8合目から、携帯電話で某男性が救助を求めて来たという。すぐに救助隊が出動し、救助したという報道でした。彼はTシャツの上に長袖のカッターシャツをはおり、ジーンズにスニーカーという格好。ライト、食料、飲料など一切を持たなかったという。事情を聞くと、「電車から見えた富士山がきれいだったから登ろうとした」と回答したそうです。まさに、散歩のついでに富士山に登ったようなもの。あるいは、「散歩するつもりでつい登った」ということです。とんでもない話ですね。

 「頑張ったかどうか」ではないのです。違うんですね。確かに、富士山に登る人も散歩する人も、「歩いている」という点では同じ。ですから、頑張ったかどうかの違いではなく、「目標に向けて」頑張ったかどうかの違いが重要なんです。頑張ることは大前提として、せっかく頑張るなら、目標を立てる。明確な目標を立てようと思うとそれだけで時間がかなり掛かるので、まずは、ぼんやりと、この辺りかなという目標を立ててみる。そして、行動してみる。近づけば、その分、目標の輪郭ははっきりしてくるはずです。

 口で言うのは簡単です。大切なのは行動を起こすこと。そして継続すること。中谷彰宏さんの言葉に、「したい人10000人、始める人100人、続ける人1人」とあります。いかに継続することが難しいかをこの言葉は物語っていますね。

 期末試験を返却しながら、点数などは問題ではないと話しました。大切なのは、このテストを通じて何を学び、どう行動するかです。同じ失敗を二度、三度繰り返すようでは力はつきません。私の長い教員人生の観察の中で、力のつかない生徒の大半は「やりっ放し」でした。このことに関して、最近、灘高校の木村達哉先生が、新刊『人生の授業』(あさ出版)の中でとてもいいことをおっしゃっておられましたので、ご紹介しますね(下線は筆者)。

 復習で重要なのは、勉強時間よりも回数。何度も何度も回数をこなしながら、
自分の
ものになるよう努力をするのです。  その努力をしなければ「塾に行ったけど伸びなかった。」「授業を聞いてい
るのに成
績が上がらない」ということになってしまうでしょう。  この復習が大事なのは、なぜでしょうか?  それは、この行為が”自分自身”との対話になるからです どうしてうまくいかないのか、どこで失敗したのか、そんなことを自分と対
話する時
間が必要なのだと思うのです だから、塾の授業を聴いて学校の復習をしようという発想は正しくないです
よね。塾
に行くなら行くで、その分も含めて復習する時間を持たなければなら
ないのです。
             ―木村達哉『人生の授業』(あさ出版)p.126

IMG_9667 この本は木村先生の来し方を赤裸々に綴ったエッセイです。次々と襲ってくる試練・苦境を先生がどのような心構えで乗り切ることができたのか、随所に先生の信念・生き方がほとばしっている、我々英語教師にとても参考になるいい本です。私は前著の『頑張ってるから悩むねん。』(ベネッセ)も読ませていただいていますが、この本もマーカーを入れながらもう一度噛みしめて反復して読みました。私は本を読んだ後で、よかった箇所・参考になった箇所を、ネタ帳」に記録しているのですが、この本は他にも何か所も記録されたことでした。みなさんにお薦めしておきます。北高の図書館にも早速入れてもらいました。

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