地方小鉄道への愛

 大好きな国民的推理作家西村京太郎先生は、北海道新幹線が開通したらいち早くこの話題を取り上げ、北海道新幹線殺人事件』(光文社、2016年)を著されました。最近では、現美新幹線が湯沢湯本~新潟間を走り始めると、早速にこの列車を題材にして、『現美新幹線殺人事件』(文藝春秋、2017年)を世に問うておられます。非常に素早くタイムリーな出版ですね。こういうタイムリーな企画が、とかく注目されますが、西村先生は、経営改善のために地方で奮闘している小鉄道へも愛情あふれた優しい視線を注いでおられます。作品の中でも、優しい目でこれを取り上げておられるのです。そんな作品を二つばかりご紹介してみたいと思います。

 1冊は『十津川警部 わが愛する犬吠の海』(祥伝社、2016年)。東京Tホテルで殺された男が残した血文字「こいけてつみち」は、被害者の名前でした。死に際に、なぜ自分の名を残したのか?十津川警部は、「小池鉄道」という駅が銚子にあると知り、現地へ急行します。銚子電鉄が駅名愛称命名権を販売、終点外川駅の権利を小池が買っていたことを掴みます。さらに彼は駅前に事務所を開く一方で、住まいのある京都では広告会社の経営を続けていた。被害者の小池はなぜ駅の命名権を買い、銚子と京都の二重生活を送っていたのか?やがて十六年前に犬吠埼で起こった悲劇が浮上した時、十津川が哀切の真相に迫るという物語です。

 地域鉄道の銚子電鉄は、幾度とない経営危機を迎えながらも、どんな逆境にもあきらめない想いと、ぬれ煎餅の製造販売に代表されるような、常識にとらわれないチャレンジ精神で、必死に鉄道事業を守り続けてきました。しかし、東日本大震災以来、観光客が激減し、それに伴い乗客数も減少し、回復の目途がたたず、再び経営危機の真っただ中にいます。 そんな経営状態を打開するために取り組んだのが、「駅名愛称のネーミングライツ」でした。単なる駅名愛称の命名権だけでなく、「銚子電鉄の経営再建」「銚子への地域貢献」という熱い想いを持った会社に、銚子の活性化への取り組みを共にチャレンジしていくパートナーとしての役割を託し、地域鉄道による地域活性モデルの確立を目指しました。2015年12月1日より、ネーミングライツによる新駅名愛称の運用が始まっています。そんな取り組みを、上の作品の中に詳細に取り入れて、小説に仕立てたのが西村先生です。先生は銚子電鉄に激励のメッセージも寄せておられます。

         「がんばれ銚子電鉄」      西村京太郎

 ここにきて、高齢者の交通事故が問題になって、免許証の返還が話題になっているが、それに比例して、地方の交通手段、特に鉄道の必要性がクローズ・アップされた。こうなると、銚子電鉄は、高齢化社会、過疎社会の重要な切り札になってきたといってもいいだろう。経済的に大変だということも、よくわかるが、銚子の人たちにとっては、必要欠くべからざるものだし、何よりも、地域の人たちの、銚子電鉄への愛情が、素晴しい。いくつもの地方鉄道に乗っているが、お世辞でなく、地元の人たちの愛し方は一番だと思う。だから、第三者の私も乗っていて楽しいのだ。現状維持だけでなく、半島を一周する鉄道になって欲しい。その時には、絶対に初電車に乗りたい。

がんばれ、銚子電鉄!

  さて、もう1冊は、札幌・桑園駅-新十津川駅を結ぶJR札沼(さっしょう)線が、最新作『札沼線の愛と死 新十津川町を行く』(実業之日本社、2017年)の舞台となり、町内でも話題になっているようです。主人公の十津川警部が、東京で起きた銃殺事件の被害者を、北海道新十津川町出身と推理し、捜査に訪れます。同線の一部区間が廃止対象となっていることも詳しく触れられています。西村先生は、奈良県十津川村の観光大使を務めておられ、同村出身者の多い新十津川町を舞台に選んだと思われます。熊田義信町長は「町を訪れる人が増えてくれれば」と利用者アップに期待しておられます。

 2016年3月のダイヤ改正で、JR北海道札沼線の終点である新十津川駅(新十津川町)は、列車本数が1日1往復(以前は3往復)になりました。札沼線は札幌駅の隣、桑園駅と新十津川駅を結ぶ76.5kmの路線です。起点の桑園(札幌)駅側は大都市近郊路線として列車本数も多いですが、途中の北海道医療大学駅(当別町)から終点の新十津川駅までのあいだは、JR北海道トップクラスの閑散区間。2014年度のデータでは、輸送密度(1キロあたりの1日平均輸送人員)が81人で、営業係数は2162円(管理費を除くと1909円)、すなわち100円の収入を得るのに2162円の経費を要する状況になっていました。そうした中、JR北海道は2015年、利用の少ない列車について運行を見直すと発表。この札沼線の末端区間(新十津川駅側)についても、3往復の運転本数を1往復に減らす方針を示していました。石狩当別駅(当別町)を7時45分に発車し新十津川駅へ9時28分に到着。折り返し新十津川駅を9時40分に発車して石狩当別駅へ11時03分に到着。わずかこれだけです。このように午前9時40分発が“最終列車”になる札沼線の新十津川駅。この新十津川駅が「日本一終列車の早い駅」になったわけです。西村先生は、作品の中でここら辺の事情も詳しく描き、プロットの中に巧みに織り込んでおられました。 

 経営改善のために駅名愛称命名権を売り出した銚子電鉄、日本一終列車の早い札沼線など、地方で奮闘する小鉄道に注ぐ西村先生の視線は、常に温かいものがあります。最近届けられた、最新の西村京太郎ファンクラブ会報「TOTSUGAWA EXPRESS」vol.30(2017年)の巻頭エッセイには、「列車の二分化に反対」と題して、こんなことを言っておられました。

 「ななつ星」が成功したとなると、たちまち、同じようなクルーズトレインが出現した。それがJR東日本の「トランスイート四季島」と、JR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」である。どちらも、より豪華な車両になり、料金も、より高くなった。それでも、前売券は、すでに完売だという。私は鉄道が好きだから、嬉しいニュースではあるのだが、心配なのは、生活に必要な列車のことである。特に、地方で、人々の足になっている生活列車の不振は、問題だった。地方の多くが、過疎を迎え、赤字になり、第三セクターになっているのだが、それでも乗客は減少し、一日五本の列車が三本になり、三本が一本になってしまった路線もある。中には、廃線になってしまったものもある。その一方で、一週間の旅行に一人七十万、二人なら、スイートルームが百四十万円という切符が売れるのである。何とか、生活列車を守れないかと思うのだが。

 他人事ではありません。島根県でも、江津と広島県の三次を結ぶローカル線の三江線は、JR西日本が全線一括廃止方針を固めています。2018年春にも三江線が廃止され、バスに転換される見通しです。この後には木次線も対象になるのでは?と恐れられています。❤❤❤

広告
カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中