speak ill of~

 加藤英和『英語語法の研究』(自費出版、平成2年)speak ill of~(悪口を言う)についての小論が載っていて、この語法の現代性を認める発言をしておられます。しかし、私はこれには疑問を抱いているんです。

 市橋敬三『間違いだらけの英語辞典』(実業之日本社、2005年)という本があります。この人の言われることは、いちいちもっともで勉強になるんですが(ただし行き過ぎもままあります)、speak ill of~に関してこんなことを言っておられました。

 筆者が高校生の時代に、「悪口を言う」を辞典で引いたところ、speak ill ofと出ていた。それでそれを一生懸命覚えてアメリカへ留学して使ったのだが、この表現は使われていないことを知った。筆者はこのことを、数多くの自著で書き、辞典の関係者に善処を求めてきたのだが、いっこうに改まらない。辞典の執筆者たちは、相当に頑固のようである。以下によく使われている表現と、辞典で誤って紹介しているものを列記するので、しっかりインプットしておこう。

リンダはあなたの悪口を言っていましたよ。
Linda    ☆said bad things about you.
    ☆bad-mouthed you.
    ◎said horrible[terrible] things about you.
    ◎spoke[talked] bad about you.
    ◎talked about you behind you back.
    ○spoke[talked] badly about you.
    ○said bad[horrible, terrible]stuff about you.
    △said awful things about you.
    △spoke horribly[terribly] about you.
    △talked horribly[terribly, shit] about you.
    ×spoke ill of you.
    ×spoke against you.
    ×whispered against you.
    ×fooled your name.
    ×disparaged you.
    ×spoke disparagingly of you.   
    ×made detractive statements of you.
    ×called you bad names.

私がこの人のspeak ill of~に関する発言を初めて読んだのは、英語専門家の誤りを指摘』(日本英語教育研究所、1983年)でした。そこにも同様の指摘がありました。

 キャサリン・クラフト先生の『先生、その英語は使いません!』(DHC、2016年)も同様の指摘をしておられます。

 手もとにある大学入試のための熟語集を数冊めくってみると、いずれもspeak ill of A(Aの悪口を言う)なるイディオムを載せています。というわけで、「他人の悪口を言ってはいけない」を、高校生や大学生に英作文してもらうと、十中八九、下のような英文を書きます。 You shouldn’t speak ill of others.

 “speak ill of A”は、ひじょうに古めかしい表現で、日常生活で耳にすることはまずありません。Don’t speak off of the dead.(死者の悪口を言ってはならぬ) このような格言めいた言いまわしでしか使わないのです。(中略) 「Aの悪口を言う」を、日常会話では、”say bad things about A/ talk[speak] badly about A/ bad-mouth A”などの表現を使います。

 ちょっと古いところでも、小西友七(編)『英語基本動詞辞典』(研究社、1980年)にも「speak well(ill) ofは一般的に参考書が取り上げているほどには用いられず、今ではpraise, criticizeなどというのが普通」とありますし、「archaicというレッテルをはるところまでいかないにしてもrarely used の中に含めるのは大胆すぎるだろうか。最近の英米の雑誌、小説の中ででくわしたことがない」英語教育』1974年5月号とあります。

 また、藤誠司「大学入試(英文法)悪問データベース」は、「入試問題から悪問を追放する」ためのサイトで、非常に勉強になるものです。先生方にはぜひ見ていただきたく思います。⇒コチラです  

「この資料は,近年の大学入試の文法問題の中から「悪問」を見つけ,解説を加えたものです。この資料を作った目的は,日本独自の「入試英語」の質の低さや現実の英語との落差を,できるだけ多くの人々に知ってもらうことです。とりわけ大学入試の出題者には,この資料を活用していただきたいと思っています。」 そこにも

Don’t speak ill of (    ) behind their backs.

① the other ② other ③ some other ★④ others

【解説】「~の悪口を言う」を英語で何と言うか?と尋ねると,おそらく10人中10人の受験生(および10人中9人の教師?)がspeak ill ofと答えるはずです。しかしこのフレーズは,日常的にはほとんど使われません。たとえば「ウィズダム英和辞典」(三省堂)では次のように説明されています。

Don’t speak ill of the dead.(死者の悪口を言ってはならぬ)などの格言的で古風な表現で好まれ,日常生活で使われることは((まれ))。

和英辞典を持っている方は,「わるくち」をひいてみてください。speak ill ofは出てこないはずです。「~の悪口を言う」の意味で使われる最も普通の表現は,say bad things about ~です。しかし日本の受験英語ではほとんどの出題者が(昔自分が受験生だった頃に覚えた)speak ill ofしか知らず,この非日常的な表現が非常によく出題されています。出題者に反省を促す意味をこめて,以下に一部の出題例を示しておきます。(以下出題例)

 本校のALTのアメリカ人エドワード先生(アリゾナ州出身)も、「聞いたことはあるが、”It is fading out of usage.”であり、普通の表現はspeak bad things about/ bad-mouth」という観察を示されました。現在現場で使っている受験参考書・問題集・辞典類にも必ず取り上げられる表現ですが、現実はチョット違っていることがお分かりいただけたかと思います。注意が必要です。♠♠♠

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