be willing toの語感

  be willing to…という成句の意味を、「喜んで…する」と今でも平気で教えておられる先生がおられます。現場で使われている参考書や問題集にも、そのような不用意なものが目立ちます。自分が高校時代に習ったことを、そのまま何の検証もすることなしに、いたずらに年を重ねてしまうとそのようになってしまいます。

 この成句は、「やってもいい、異存はない」程度の意味で、積極性は含まれず「本当はやりたくないけれど…」という気持ちを暗に示しています。デイビッド・セイン先生は、be willing to …ifと、後ろにifの条件文がついていると考えるとよい、とアドバイスしておられますね。私は学生時代、アメリカ人の恩師からホームパーティに招待された時に、”I’m willing to go.”と何度も応答して、「来たくなければ来なくてもいいよ」と冷たく言われた経験を思い出します。「そんなつもりはないのに…」と、当時はチンプンカンプンで分かりませんでした。その後、いろいろと調べていくうちに、will「意志」の形容詞がwillingだということに行き着いたんです。これはあくまでも「…する意志がある、…してもよい」というニュアンスで使われることが、小説やネイティブ・スピーカーの観察から分かってきました。さすがに今の辞書にはちゃんと書いてありますが(例えば、私は『ライトハウス英和辞典』に、語法 be ready to…ほど積極的な気持ちはない:If you’d like me to go with you, I’m quite willing. (もしいっしょに行ってほしいのならお供してもいいですよ)/We were disaappointed by the outcome of the election, but we’re willing to accept it.(我々は選挙の結果に失望したがそれを受け入れる気だ)のような記述を残しました)、当時は堂々と「喜んで…する」だけだったんです。学校でも、単語集でもこの訳語だけだったと記憶しています。現在学校で用いている参考書・問題集も、いまだにこのような扱いをしているものが多く見られます。ここで面白いのは、この単語の副詞形であるwillingly「喜んで」の意味だということです。英語って難しいですね。

 I’m willing to help.    willingも多くの日本人に誤解されている言葉です。辞書にもwillingの項には“喜んで、快く~する」という意味だけが掲載されていることが多いのですが、これでは説明不足というしかありません。be willing to…というフレーズが出てきたら、be willing to…ifと、後ろにifの条件文がついていると考えてください。例えば、I’m willing to help.の場合には、I’m willing to help if you let me use your car.(自動車を貸してくれるのなら、喜んで手伝いますよ)といった何らかの条件をネイティブは想定しながら話をしているのです。  ―デイビッド・セイン『ネイティブに嫌われる英語』(アスコム)

 辞書や参考書の中には、”be willing to do”は「喜んで~する」と書いてあるものがありますが、この表現にはそうした能動的な積極性はなく、「~するのは苦ではない」というニュアンスで用いられるのがふつうです。古い日本語に「~するのもやぶさかではない」という表現がありますが、それにぴったりなのが”be willing to do”なのですキャサリン・クラフト『先生、その英語使いません!』(DHC)

【積極的】↑
I'd love to help.
Let me give you a hand.
I'd like to help.
What can I do for you?
Okay, I'll help.
I guess I'd better help.
I'm willing to help.
Let me do it.
I guess you want me to help.
【消極的】↓ 

 『ライトハウス英和辞典』(研究社)の改訂(私は語法・類義語担当)の度に、M.アルトハウス教授(津田塾大学)の語感鋭い書き込みを読ませていただくのですが、本当に英語って一筋縄ではいかない、と痛感するんです。そんな、現場で誤解されている英語表現ばかりを集めて、一年間連載したのが、「Bolinger博士の語法診断」『現代英語教育』4~3月号(1990年~1991年、研究社)でした。また、英和辞典の問題点を、「英和辞典のウソ」と題して『高校通信東書英語』(1983~1984年、東京書籍)に連載を持たせてもらいました。そこで述べていることは、今でも十分当てはまることばかりです。興味のある方はバックナンバーで読んでみてください。❤❤❤

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be willing toの語感 への2件のフィードバック

  1. 作野健太 より:

    本筋の話から少しそれるのですが、文化庁の「国語に関する世論調査」(平成25年度)(URL:http://ironna.jp/article/525)によると、やぶさかでないの意味は「喜んで~する」とあります。
    とすると、上記の”be willing to do”のニュアンスと異なるように思われるのですが、どうでしょうか。

    • teamhacchan より:

      確かに本来はそのような意味のはずですが、現在はどちらかというと「気乗りがしない」という意味で使うほうが多いと思います。そのような立場で述べられていると
      感じています。産経新聞の調査結果が参考になります。http://ironna.jp/article/525

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