高校入試問題から

 私は、今年1月22日のブログに、「極楽と地獄」と題して、仏教の教えから次のような内容を書きました。授業でもよく話す話題です。再録しておきます。

 「極楽と地獄はどう違うのですか?」という質問に対して、尊敬する京セラの名誉会長・稲盛和夫(いなもりかずお)さんが、仏教の教えを引用して各所で話しておられることを、引用することにしています。あの世には「極楽」「地獄」もありますが、見た目は両者は全く同じ世界です。違うのはそこに住んでいる人の心だけだと言います。

%e3%81%86%e3%81%a9%e3%82%93 厳しい修行に明け暮れる雲水(修行僧)にとっては、うどんは一番のごちそうです。部屋の真ん中に置いてある大きな釜に、美味しそうなうどんがぐつぐつと煮えたぎっていて、つけ汁も置いてあります。ただし食べ方のルールは決まっていて、一メートルぐらいの長い箸でその端を持って食べなければなりません。極楽も地獄もここまでは全く同じ。釜の大きさも、その釜を囲んでいる人数も一緒です。ところがそこにいる人の心だけが違っているのです。

 「地獄」では、一メートルの箸でうどんをつかむやいなや、自分のそばにあるつけ汁につけて少しでも早く食べようとするのです。ところが、箸があまりにも長すぎて自分の口には入りません。反対側からは、こいつに食われてたまるものかと、人の取ったうどんを箸で引っ張る。こうして大釜の周辺にはせっかくの美味しいうどんが飛び散って、誰もうどんを食べることはできず、うどんの取り合いという阿鼻叫喚の地獄絵図が展開するわけです。

 ところが、「極楽」には思いやりにあふれた人たちだけが住んでいます。そこでは「うどんができましたよ。みなさん、一緒に食べましょう。」―「それでは頂戴します。」と長い箸で釜の中のうどんを取ると、―「はい、あなたからどうぞ」と箸を伸ばし、つけ汁につけて向こう側の人に食べさせてあげるのです。この人は―「ああ、おいしゅうございました。今度は、あなたがどうぞ」と言ってその人にうどんを取って食べさせてあげる。うどんは少しもこぼれないし、誰もが穏やかに美味しく食べることができる。人々は手を合わせて、感謝しながら食べています。これが極楽絵図です。

 このように外見は「地獄」と何ら変わらない「極楽」ですが、「心の在り方」一つで同じことも全く違った結果をもたらすことを、このたとえ話は教えてくれています。私は今まで、こうした「利他の心」(私は”give & give”と呼んでいます)を忘れずに生きてきました。自分が幸せになりたいという気持ちはもちろんありますが、それ以上に、自分がやっていることで他の人が少しでも喜んでくれる、人のお役に立っている、感謝してもらっている、ということが実感できれば、これに勝る喜びはありません。毎日教えている生徒たちには、授業の合間に、そんな生き方もいいもんだよ、と話しています。退職するときに、たくさんの教え子たちからねぎらいや感謝の言葉をかけていただきましたが、その時に今までやってきたことが間違っていなかったことを実感しました。これからもそんな生き方をしたいと考えています。

 さて、昨日3月7日は、島根県公立高校の高校入試の日でした。私たち英語科の教員は夜遅くまで採点に明け暮れました。今年の英語の問題は、形式・題材・内容ともに随所に新しい試みが見られ、なかなか工夫されているなという印象(中学生にとっては大変だったでしょうが)でした。今日は、その中の第3問題の問3を取り上げます。

 次の英文を読んで、この話から得ることができる教訓として最も適当なものを、下のア~エの中から一つ選び、記号で答えなさい。

    Once there was a man. He went to heaven and hell. People in both places had a lot of delicious food on a big table. And they had the same rule : they had to use very long chopsticks to eat. In hell, people looked very hungry and angry. They could not get any food into their own mouth because the chopsticks were too long. Then he went to heaven. People there were enjoying delicious food. Do you know why? They were giving food to each other with their long chopsticks.

ア It’s important to learn about heaven and hell.
イ It’s important to use things you have for other people.
ウ It’s important to follow rules at any time.
エ It’s important to have meals with a lot of people. 

 まさに、上記の「極楽」と「地獄」を描いた問題です。話の概要をつかんでそこに述べられた教訓を選ぶ、というなかなか考えられた良い問題だと思いました。ただ英文中のmouthはmouthsと複数形に、最後のdelicious foodにはthe delicious foodと冠詞をつけなけれけばいけません(他の問題でも英語として?と思う箇所がありました)。英語科で話し合ったのは、正解選択肢イの内容の妥当性についてです。この話の教訓を語るのにふさわしいかどうかという点です。この話は「利他」の精神を説くものですから、お互いが助け合うことの大切さ」を読みとらなければいけません。はたして、正解のイ「自分の持っているものを他人のために使うことの大切さ」がそれにふさわしい表現かどうか、疑問が残るところです。「後置修飾」は生徒の苦手とするところですから、このような英文になったのだと想像しますが、やはり?がぬぐえません。いかがでしょうか?

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