ポール・ダニエルズご逝去

Paul Daniels 2 イギリスで人気、実力とも群を抜いているマジシャンとして、ポール・ダニエルズ(Paul Daniels)がいます。私が大好きだったマジシャンです。3月17日早朝に脳腫瘍でお亡くなりになりました(享年77歳)。ダニエルズさんは2月20日に完治不能な脳腫瘍と診断され入院していたのですが、先週退院。17日の早朝、Berkshireにある自宅で愛妻のDebbie McGeeさんに看取られました。心よりご冥福をお祈りいたします。

 ポール・ダニエルズは1938年4月6日、イングランドのミドルズブラという、ティーズ川河口の港町で生まれました(Newton Edward Danielsが本名)。マジックは11歳のときにHow To Entertain At Partiesという本に出会ったのがきっかけで、自分でもマジックをするようになったそうです。最初のうちは、地元のナイトクラブなどでマジックを見せていましたが、明るく軽妙なユーモアに包まれたキャラクターがテレビでもうけて、数多くの番組に出演するようになりました。なかでもイギリスの放送局、BBCで1979年6月から1994年3月まで15年間続いた「ポール・ダニエルズ・マジック・ショー」は特筆すべき番組です。このシリーズは当初4回分と、クリスマス用の特別番組が作られ、それで完結する予定でした。1回の放送時間も30分です。ところが予想を上回る大反響があったため、翌年も続いて制作されることになりました。シーズンごとに2回ずつ、年間計8回の番組が作られ、1回の放送時間も50分と長くなりました。これが予想外に長寿番組になり、1994年の3月まで15年間も続くことになったのです。制作された番組は全部で150本ほどになっています。マジックを中心にした番組で、これほど長く続いたものはイギリスだけでなく、世界中でも他にはないでしょう。これだけ続いたのですから、イギリスではたいていの人がこの番組のことを知っています。現在20代から40代くらいの英国人に尋ねてみると、ほとんどの人が子供のときに見ていた、と懐かしそうに語ってくれます。とにかくイギリスではポール・ダニエルズの人気、知名度は群を抜いているんです。15年続いたこの番組が1994年3月で終わったあと、同年12月に”Secrets”という新しいシリーズが始まりました。これは今までとは違い、スタジオにナイトクラブを模したセットを作り、観客も本当のナイトクラブでショーを見ているような雰囲気になっています。このシリーズは1996年まで計8回放送されました。彼のウィット・魅力・マジックの技術は、英国皇室の方々にも好評に迎えられました。

 “The Paul Daniels Magic Show”が、英国でのポール・ダニエルズの地位を不動のものにしたことは間違いありません。15年という月日は決して短くありません。ポールはこの番組の中で、アシスタントとして出演していた女性、デビー・マギーと1988年に結婚もしています。この番組が15年間もの長きにわたって続いたのには、それなりの理由があります。マジックだけをやっていたのでは、とてもこれほど長くは続かなかったでしょう。この番組に人気があったのは、彼の軽妙な語りを背景としたマジックだけでなく、音楽、ダンス、ジャグリング、ギャンブラーのテクニック、カーニバル等で見かけるいかさまゲーム、超能力風マジックなど、様々な分野のものを紹介し、出演する芸人も世界中からトップレベルの人を呼んでいたからです。マジックの合間に、マジックとは別の芸が入ると、ポールのマジックそのものも大変リラックスして楽しむことができますね。ポール・ダニエルズの選球眼の良さ、演出の軽妙さ、出演する芸人のレベルが高いことなどが相まって、すばらしいエンターテイメント番組になっています。1500万人の視聴者を楽しませたと言われています。ポール自身が手に負えないものは、本物のコン・マンを連れてきて実演してもらっています。

 かつてこの番組は、日本のNHKでも放映されていて、私も楽しみに見ていたのですが、中でも私が忘れることのできない演技は、「メンタル・フォトグラフィーデック」(Mental Photography Deck)を演じたときです。彼はこのマジックをストーリーを交えて見事に演じていました。両面真っ白なデックが、裏模様が出てきたり、表のマークや数字が現れたり、そしてまた元の真っ白なデックに戻ってしまうという、この世界ではごくありきたりの有名なトリック・デックなんですが、印刷屋の印刷前のトランプを持ってきた、とストーリー仕立てのポールの演技を見ると、今までとは全く印象の異なる面白いマジックになっていました。今でも忘れることができません。「これは印刷工場で印刷に失敗した印刷されていないデックです。裏も表も真っ白です」 両面真っ白なカードであることを確かめます。「でも思いを強くすると、ここで印刷することができるんです。赤いカードがいいですか?すると取り出したその中の一枚のカードに、赤いマークが印刷されます。でも裏はまだ真っ白。今度は黒いカードですか?すると取り出したもう一枚は黒いカードに早変わり。でも依然として裏は真っ白なんです。でも強く思えば裏・表全部印刷することができます。」 ここでカードをはじくと、全てのカードの表・裏模様が現れるのです。「でもこれは幻で、やはり元の真っ白いカードに戻ってしまいます」と言ってデックをカットすると、また元通りの裏も表も真っ白なデックに戻ってしまいます。マジックの語りの重要性を教えてくれた番組でした。

Paul Daniels

  たまたま、Vanish ―International Magic Magazineの最新号(2016年2・3月号)が、ポール・ダニエルズの特集を組んでいます。Ben Robinson“Paul Daniels   A Lifetime of Magic”(pp.63-83)というインタビュー記事です。彼の人となり、生育環境、マジック哲学、大切にしていることがよくわかる記事でした。私がずいぶん前にイギリスを訪れたときには、すでにセミリタイア状態でしたが、会う人会う人がご存じで、愛されているマジシャンであることが本当に実感されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

 

 

 

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