ウォークマン秘話

 昨日に続いて、ソニーのお話です。

 伝説の「ウォークマン」を、当時開発するにあたって、ソニーの社内では「録音と再生、両方ができてこそのテープレコーダーだ。録音ができない再生だけのプレーヤーなんて買う人がいるわけない!」と、社内中、反対だらけでした。市場調査をして物知り顔で「売れる可能性はゼロ!」という人もいました。ところが、製造段階に入ると工場のラインの人たちからは「発売されたら絶対に買う」という声が続出しました。市場調査で誰も想像しないものがわかるくらいなら、商品開発は調査会社に頼めばいい。市場は調査するものではなく、創造するもの」というのが、ソニー内部での金言です。

 「音楽を聴くのは好きだが、周囲に迷惑はかけたくない。かといって1日中ステレオの前に座っているわけにもいかないから、カセット・プレーヤーとヘッドフォンを持ち歩いているんだ。けれどこれが重くてね…。」と漏らした井深 大さんの愚痴に、プレーヤーを小型化したら持ち運びが楽になる。面白い、これはいける!」と創業者の盛田昭夫さんは反応しました。ところが、このアイデアは社内で大反対にあってしまったのです。録音機能のない、再生walkman機能しかないプレーヤーなど誰が欲しがるものかと大反発されました。開発チームのわずかなメンバー以外に、盛田さんを支持するものはいません。ここで多数派の意見に傾いていたら、あの「ウォークマン」は生まれなかったことでしょう。盛田さんはこう断言して押し切ります。とにかく売り出してくれ。もし、3万台売れなかったら会長を辞める」 自らの進退を賭けた大勝負でした。背水の陣で臨んだ「ウォークマン」は、1979年7月から発売が開始されたましたが、当初思うように売れ行きは伸びません。ソニーの社員にウォークマンをつけて街を歩かせたり、芸能人に使ってもらったりして話題作りに奔走します。「あれはいったい何だ?」 これが決め手となって火がつき、新しいファッションとして口コミで広まっていき、8月以降は品切れ店が続出します。最初に用意した3万台はたちまちにして完売して、20年間で2億台以上を売り上げるメガヒット商品となったのです。

 盛田さんが最初に「3万台」と言ったのには理由があって、もしも失敗した場合、何台売れれば元が取れるかということを事前に計算して、3万という数字をはじき出していたそうです。もちろんその3万とて売れる保証はなかったのですが、自身の首を賭ける一方で、冷静に経営者としてそろばんをはじいていたことは注目に値しますね。

 開発を担当した大曽根幸三さんはこう振り返ります。

 ウォークマンは1979年2月、盛田昭夫会長(当時)から「大学の夏休み前に発売しよう」と言われ、わずか4カ月で開発しました。録音できないただの再生機なんて売れっこないと直属の上司をはじめ社内のあちこちから中傷され、つらかった。あまりにも四面楚歌なので設計の仲間と、「本当に売れなかったら東芝か松下電器産業にでも入るか」と話したほど。しかし幸い、“上の上”が味方についていた。盛田さんが「俺が会長の首を賭ける。売れなかったら辞めてもいい」と言ってくれたのです。百万人の味方を得た気持ちです。ところが発売当初はまったく売れない。グループ販社も系列専門店のソニーショップも「こんな半端物」と見向きもしません。唯一、丸井の新宿店にいた三十何歳の仕入れ担当の方だけが「これは売れる!」とまとめて注文してくれました。あの恩は忘れません。その後ウォークマンは大ヒット。年末商戦期には一転、品薄状態になりましたが、恩義のある丸井には1万台を最優先で卸すよう販売にお願いしました。ああいう自分の目で判断できる社員がいたから、その後、丸井は成長したのでしょう。

 ところで、「ウォークマン」というネーミングは、若いスタッフのアイデアでした。当時「スーパーマン」が流行していたことと、この基になったテープレコーダーの機種が「プレスマン」だったことから思いついたといいます。屋外に持ち出して、歩きながら音楽を楽しむという意味も含まれていました。しかし、「ウォークマン」は英語としては通用しない和製英語です。そこで海外の販売会社は、このネーミングを使いたくないとソニーに言ってきました。そこでやむなく、アメリカでは「サウンドアバウト」、イギリスでは「ストウアウエイ、オーストラリアでは「フリースタイル」という名前を付けて売り出したのです。しかし、日本での「ウォークマン」の人気が高まり、来日した外国人がこぞっておみやげとして買っていくようになると、いつしか「ウォークマン」のネーミングは海外でも広く認知されるようになっていきました。そこで盛田会長は、「こうなったら世界中でウォークマンという名称を使おう」と決断し、全世界で名称は「ウォークマン」に統一されることになるのです。そして1986年には、世界で最も権威のある英語辞典Oxford English DictionaryにもWalkmanは掲載され、正しい英語として認定されるまでになったのでした。

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