スピーチの練習の仕方

 9月27日(日)に行われた「第49回ヘルンをたたえる青少年スピーチコンテスト」(主催:松江市、松江市教育委員会、八雲会)では、残念ながら松江北高の生徒は入賞出来ませんでした。松徳学院高校の女生徒が優勝しました(この生徒、私もよく知っています)。私は今年は見に行っていないのですが(寮の日直をしていました)、今年から演壇が取り除かれ、身体全体を使ってのプレゼンテーションが審査対象となったようです。心理学者アルバート・メラビアン博士の研究によれば、「言葉」は私たちのコミュニケーションの約7%にしかなりません。「声のトーンや抑揚」が38%になり、「ボディーランゲージ」が残りの55%を占めているというのですから、このことは当然と言えるでしょうね。

 振り返ってみると、私は昨年まで10年間、松江北高でこのコンテストの指導をしてきましたが、優勝5回、2位4回(1・2位を独占したことも2回)という好成績を生徒が獲得しています。ただ暗唱するのではなく、冒頭に作品に対する生徒の感想・評価を述べてからスピーチを始める、という画期的なアイデアを初めて実践して高い評価をいただいたのも松江北高です。この大会だけでなく、英語のスピーチコンテストでは、いつもこの松徳学院高校と優勝争いを演じてきた印象があります(昨年だけは矢上高校のスーパースターに1位の座を奪われましたが)。松徳学院には坂本京子先生という立派な指導者がおられ(文部科学大臣表彰を受賞されました)、同校(ミッションスクール)のシスターと一緒になって鍛えておられます。やはりこういうライバルの存在は大切ですね。お互い切磋琢磨して高め合うということです。毎日夜遅くまで残って練習する、時には私の自宅で遅くまで特訓したこともあります。生徒に高いハードルを課して、それを乗り越えさせることで大きな自信をつけて、本番に臨んでもらう。この10年間縁起をかついで、お昼は生徒と一緒に、プラバホール近くの「とんかつ一番」でトンカツを食べて本番に臨みました。できることは全部やり尽くして本番を迎える、これが重要なポイントですね。

 DSC01038さて、恩師の常松正雄先生(つねまつまさお、島根大学名誉教授)が、スピーチに関して、どのような準備をして練習をしたらよいのかを、段階を追って詳しく述べておられます(改訂 新・小泉八雲暗唱読本)。暗唱しようと思って、それだけを頭に入れて努力するのではなく、テキストの内容を十分に理解してその作品を楽しみ、何度も何度も音読を重ねるうちに、おのずとそのテキストの内容が身について、暗唱が完成する」というやり方です。常松先生は、ヘルンのスピーチコンテストの審査委員長を長らく務められた先生で、いつも会場のプラバホールで、私は声をかけていただき励ましてもらいました。

第1段階  テキストを読む
1)スピーチの基本は、まずテキストの内容を十二分に理解し、自分のものにしてから出発する。
2)わからない単語を辞書で調べる。
3)全体の内容を理解した上で2、3回読む。
4)一つ一つの文の中で、一番重要な意味を持つ単語をマークする。
5)マークした単語に注意しながら、2、3回読む。

第2段落  音読を始める
1)腹から十分息を出して音読する。
2)一つ一つの単語をストレスの場所(一番強く発音するところ)を思い切って強く発音するように心がける。
3)それぞれの分を最小限度意味のまとまったかたまり(センス・グループ)に区切って読む。
4)それぞれのセンス・グループのなかで、一番重要な単語を強く、ややゆっくり読み、その他の単語は少し弱めて、早めに読む。これにより日本語の平板的な読み方とは違った、英語らしいリズムが出てくる。
5)物語・エッセイ全体のなかで、ハーンが読者にときに強く伝えたいと思ったであろうと受け取る部分を強くかつややゆっくりと、文章全体を3)を土台にしながら、英語らしいリズムをくずさないように読む。

第3段階  録音テープやCDを聞く
1)ネーティブ・スピーカーが録音したテープやCDがあれば、それを聞いて、単語の正しい発音や文のイントネーション、文章全体のリズムを身につけるようにする。
2)最初2、3回繰り返して聞く。
3)一つ一つの文ごとに復唱する。これを2、3回繰り返す。
4)テープやCDのすぐ後を追いかけて全体を十分声に出して読む(いわゆるシャドーイングをする)。これは、できるだけ多く繰り返す。

第4段階  自分の音読やスピーチを録音する
1)自分の音読を自分の耳でよく聞いて、どこが十分でないかチェックする。
2)チェックした点を何度も何度も練習して、より正確な発音・イントネーション・リズムで音読するようにつとめる。
3)一応正しい音読ができるところで、全体をスピーチとして練習し、それを録音する。単語が明瞭に発音されているかどうか、文のイントネーションはどうか、文章全体のリズムは日本語的な平板になり過ぎてはいないかなどを、自分の耳でチェックして、より望ましいスピーチに仕上げる。
4)この段階では、先生の細かい指導をしていただくようにすれば、効果が上がるでしょう。

第5段階  テキスト全体を自筆で書いて、文章を自分のなかに取り入れる
1)テキスト全体を自分の手でたんねんに書き写すことは、それを本当に自分のものにし、体にしみ込ませるのに効果がある。
2)自分の書き写したテキストを目で追いながら、音読やスピーチの練習をかさね、十分に暗唱できているか確かめる。

第6段階  自分のスピーチを鏡でチェックする
1)口の開き方やからだ全体の動きがどのようになっているか、スピーチの聴衆に訴える力を強めるために、その内容にマッチしたジェスチャーが自然な形でできているか鏡の前でチェックする。
2)ビデオカメラがあれば、からだ全体の動きを写してみると、より効果的でしょう。

第7段階  まわりの人に聞いてもらう
最終段階として、自分が仕上がったと思うところで、友人・親・先生などの前で、本番どおりのスピーチをして、自分では気づかない点を指摘してもらい完成度をより高める。

 ここまで詳細に、現場目線で事細かくスピーチの練習方法の指針を述べた文献を私は知りません。とても参考になりますね。私はこの10年間、この常松先生のやり方で生徒を指導してきました。これからスピーチを指導される若い先生方の参考になればと思い、ご紹介させていただきました。私は自分の指導方針を、次のようにまとめています。

(1)完璧に原稿を暗記して自分のものにする。(ここが一番重要) これができていると自然と感情表現が湧いてくる。

(2)制限時間不足・超過に注意する。

 (3)効果的に使いたい感情表現 (原稿に書き込んでおくとよい)
ア 声の大きさの強弱
イ 目線、顔の向き
ウ 顔の表情
エ 自然なジェスチャー表現
オ 話すスピードの強弱
カ 間の取り方

DSC01037 ヘルンのスピーチコンテストに関しては、毎回入賞者のスピーチを収録したCDが、松江市教育委員会で作成・販売されており、毎年市役所まで買いに行ったものです。過去のものを北高英語科では全部そろえて、上手な人の優秀なスピーチを参考にしなさいといって、生徒に貸し出していました。CDに収められた松江北高の先輩のスピーチを聞いて刺激をもらうことになるわけです。

 

広告
カテゴリー: 英語指導に関して パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中