鉄道デザインの心~水戸岡鋭治の世界

水戸岡 素朴な疑問。どうしてJR九州の特急列車は、ああも魅力的な列車が多いんでしょうか??特急「かもめ」のシート・車体の純白の白、特急「ゆふいんの森」のデザインや車内の橋、特急「ソニック」のトイレ、指宿の玉手箱」の白煙、ななつ星」の豪華な内装やサービス、多くの列車が木の床を採用していることなどな▲特急ソニックのメタリックボディーど。私の住んでいる山陰地方の特急列車とは雲泥の差です。その答えは簡単です。全部の列車デザインを担当しておられるのが水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんだからです。そのことは何回かこのブログでも詳しく取り上げてきましたね。「水戸岡鋭治~逆転の発想術」コチラ  「水戸岡鋭治さんの哲学」コチラ  その水戸岡さんがこのたび『鉄道デザIMG_9053インの心 世にないものをつくる闘い』(日経BP社、2015年6月29日)を上梓されました。この本を読んで水戸岡さんの原点を、そして仕事の心構えと覚悟を見ることができました。

 この本を読んでわかったことが一つあります。水戸岡さんが社長を務める会社は「ドーンデザイン研究所」というのですが、この「ドーン」がどんな意味か分かりませんでした。英語のdawn(夜明け)にかけてあるのかな、ぐらいに思っていたんです。水戸岡さんの名前は「鋭治」。親はもっと鋭い人間にしたかったのでしょうが、あまりにどんくさいので子どもの頃は「えいじ」ではなく「どんじ」「どんじ」と呼ばれていたそうです。この名前が気に入っていて、社名にまで取り込んだということのようです。今でもどんくさく仕事に精を出しておられます。

 あの「ななつ星」を手掛けられたためでしょうか、水戸岡さんは最近、高級な車両をデザインする「アーティスト」のような立場に見られることがあるようです。しかしご自身は「デザイナーは顧客の要求を汲みとり、交渉し、妥協し、予算を管理し、値切り、請求書を発行し、地べたを這いまわってものを創り上げていく仕事」と言い切ります。自分の中からわき上がってくるものを作品にするアーティストとは違う」とおっしゃいます。むしろ、技術者、設計者が手掛ける、あくなき“ものづくり”の職人の仕事です。その視点は常に、車両に乗る人、駅を使う人の側にあり、その要望を実現するために鉄道会社、車両メーカーなどを相手にさまざまな「闘い」を繰り広げます。そのために多くの人と対話する、その対話のために自分がちゃんと勉強しておく、しっかり本を読んで、しっかりものを聞いて、おいしいものを食べて、いろんなものを見て、それを身に付けたうえで自分の思っていることを正直に言葉に変えていく。この本の最終章が「楯突くということ」とあるのは、非常に興味深いものがあります。列車の利用者であるお客様のために「何ができるか」を第一に考え、雇用主に対してもその一点で決して妥協することはなく楯突く、という水戸岡さんの原点を実感することができる本でした。

 本当の顧客は最終ユーザーです。列車に乗るお客さんです。子供やお年寄りなどの利用者です。それから車内で働くスタッフも大切です。スタッフが感動して「この空間なら私たち頑張れます」と言ってくれることが大事です。僕は利用者の代表として、ものを申したい。自分がやりたいことのために闘うわけではなくて、ユーザーのために闘います。

 JR九州側に立たないでデザインしていいですか。僕は利用者の代表としてデザインしたいのです。

 その様子を通して、「ものづくり」というビジネスにいったい何が大事なのかを浮き彫りにします。「ななつ星」の洗面台をデザインした、国宝14代目酒井田柿右衛門をはじめとした車両の内外装、小物などを手掛ける数多くの職人との共同作業の描写にも多くのページを割いているほか、「或る列車」や大分駅舎のリニューアル、街づくりなど、著者の最新の仕事にも触れられていて、引きずりこまれるように読み進めることができました。やはり、この人はただものではありません。すごいです。

IMG_9691

広告
カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中