村田修一の涙

 村田 私は小さい頃から熱狂的なジャイアンツファンです。巨人が7月10日の阪神戦(東京ドーム)に4―2で逆転勝ちして、4連勝で首位を守りましたね。試合のヒーローは1点を追う2回、メッセンジャーから値千金の逆転4号2ランを放った野球小僧村田修一(むらたしゅういち)内野手(34歳)です。4月30日の中日戦以来の、自身27試合ぶりの一発です。今季不振に苦しむ大砲は、お立ち台のヒーローインタビューで、約2ヶ月ぶりに観戦した息子三人の話題を振られ、「息子さんたちに声をかけてあげてください」とマイクを向けられると、言葉に詰まり感極まって人目をはばからず男泣きしました。「いつもパパのホームランが見たいと言ってくれる息子の前で……」 感謝の思いを伝えた語尾が大歓声でかき消されました。うれし涙が、目頭にあふれていました。熱い涙の裏には、積もりに積もった悔しさもあったはずです。実は、この涙の一発の陰には、強い結束で支える家族の存在があったようです。

 9日の練習後、夜村田家の夕食は「たこ焼き」だったそうです。テーブルの真ん中に置かれたたこ焼き器を、妻と三人の子どもで囲みました。一心不乱にクルクルと作り、100個以上の「タコ=無安打」を焼きました。子どもたちを寝かしつけ静まりかえったリビングで、残りをつまみながら、冷めたたこ焼きに、若手時代のハングリーな日々がよぎりました。「パパのホームランが見たい」と無邪気に笑う息子たちの笑顔が浮かぶ中、「ずっと自分がどうしたら打てるかって考えていた。でも、明日からはどうやったらチームが勝つかを考える」と切り替えました。

 村田にはことさら手厳しい原監督が、ちょうど、まばたきしていて、わからないぐらいのスイングと打球の速さ。見事だった」と思わずうなった一撃が飛び出したのは、1点ビハインドの2回一死一塁。メッセンジャーの外角スライダーに力強く合わせ、村田らしく逆方向へ伸びた打球は、そのまま右翼席に突き刺さりました。今季初の決勝打です。ベースを一周する感覚も「久しく打ってなかったので忘れかけていた」と言います。この日は決勝弾を含む2安打2打点の活躍でしたが、成績は今も2割2分9厘、4本塁打、11打点と寂しいものです。開幕直前に二軍落ち、開幕戦にはギリギリ間に合ったものの打てない日々が続きました。5月20日に右太ももの裏の肉離れで移籍後初の二軍調整。2日後の再検査で右脚付け根付近の肉離れも判明。6月19日に一軍昇格したが、打率は2割台前半まで落ち込みました。ちょうどその頃、首都圏が軽い地震に襲われ、知人から「じしん、大丈夫?」とのLINEが届くと、「地震?自信?」と自虐的に返信するほど心は折れかけていました。打順は下位が定位置となりました。プロ13年目で最長のスランプ。「村田打てよ!」「打てないならせめて守れや!」と心無いヤジが飛び交います。不安や危機感に襲われる日々に、いつしか笑顔は消え、鬼の形相になっていました。屈辱の日々に耐えるなかで生まれた一発は、一番近くで見守ってきた家族の涙も誘いました。試合を観戦後、3人の子供を連れて真っ赤に目を腫らして現れた絵美夫人は、「今日はホームランよりも、あのインタビューを聞けたことが良かったです…」と声を詰まらせました。絵美さんによると、今季は家でも「子供たちが寝た後は、声をかけづらい空気でした」という。それでもここ数日の村田は少しだけ明るい表情を見せるようになり「俺が打てなくても、チームが勝てばいいんだよ」と前向きな言葉を急に口にするようになったといいます。

 村田の心境が変化した理由は、本人にしか分かりませんが、きっかけのひとつは、先週末に届いた“母の手紙”だったとのことです(『大阪スポーツ』による)。福岡の両親も、最近テレビで見せる村田のふてくされたような表情が気になっていました。父・裕文さんも「球団も外国人の補強に動き始めている。本人はつらいだろうな」と心配していました。そこで母・明美さんが、家での様子をメールで絵美さんに尋ねると「心が折れかけているかもしれません」と弱気な返事が戻ってきました。「ああ、これはただごとじゃないな」と感じた明美さんは、すぐに「修さん、心だけは腐らしたらいけんよ」としたためた手紙を息子へと送ったといいます。返事はなかったが、母は「数日前から、少しだけ表情が明るくなったかな」と小さな変化を感じていました。

 たった一発で信頼を回復できるほど、村田選手が置かれた立場は甘くはありません。それでも絵美夫人によれば、来春に小学校へ入学する次男・凰晟くん(6)は今、オレンジ色(ジャイアンツカラー)のランドセルをせがんでいるといいます。「3番目(瑛梧くん=9か月)も生まれたばかりだし、もうちょっと巨人で頑張ってもらわなきゃ」。球界屈指の結束を誇る一家の支えを背に、男・村田は意地の巻き返しを見せられるでしょうか。横浜で四番を長年はってきた男です。原監督は「まだまだできます。本来の村田修一の打撃を取り戻して欲しい。涙?やっぱり勝負ってそういうものだよね」と讃えました。高橋由伸コーチとの朝の特訓成果で、男・村田修一」の復活を願います。

 蛇足ながら、これとまったく対照的なヒーローインタビューが勝ち投手のポレダ投手。1月半ぶりとなる6勝目を挙げた彼は上機嫌。インタビューの締めは「オヒサシブリデェース!…ツカレマシタ!オナカスイタ!オヤスミナサイ!アリガトウゴザイマシタ!」 能天気さに笑ってしまいました。 

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